鋸岳(のこぎりだけ)。
山梨百名山・四天王のひとつ。
名前のとおり、ノコギリの歯のようなギザギザの稜線を持つ、難峰中の難峰です。

正直に言います。
「この山へ行くのは、ずっと腰が重かった」
「いつかは行かなきゃ」 そう思いながら、先延ばしにしてきました。
そんな私を連れ出してくれたのが、登山仲間でした。
彼は昨年から、登山口へ下見に通ってくれていて。
車で入れるゲートの様子、車の置き場所、そして——
「自転車、あったほうがいいよ」というアドバイスまで。
狙うは、本格的な夏が来る前。雪解けのこの時期。
梅雨の真っ只中でしたが、日が近づくにつれて予報は好転。
今回も、仲間の晴れ男パワーに助けられました。

こうして—— 腰の重かった私は、仲間のおかげで動き出しました。
結論から言うと——
急登は、噂どおりしんどい。
でも岩場は、三点支持を守って慎重に進めば、極端に怖がりすぎる必要はありません。
そして山頂からの景色は、すべての苦労を報いてくれました。
長い林道は、ここが核心部かと思うほど長く感じます。
この記事では、山梨百名山・四天王と呼ばれる鋸岳日帰り登山の様子をお送りします。
- 山梨百名山“四天王”の鋸岳が、実際どれくらいキツいのか知りたい人
- 日帰りで鋸岳(富士川源流ルート)を狙っている人
- 長い林道に、自転車を使うべきか迷っている人
- 山頂手前の岩場が、どれくらい難しいのか不安な人
- 鋸岳に行きたいけれど、なかなか一歩を踏み出せない人
コース概要
往路:国土交通省作業道ゲート詰所 → 釜無川ゲート → ログハウス → 富士川源流 → 横岳峠 → 三角点 → 角兵衛沢ノ頭→ 鋸岳(第一高点)
復路:往路と同じ
- 行動時間: 9時間37分(うち休憩 約2時間)
- 距離: 16.4km
- 累積標高差: のぼり1,835m/くだり1,847m
- コース定数: 42(きつい)※標準タイム11:07で算出
- 体力度: ★★★★★(上級者向け)
- 技術度: ★★★★☆
コース定数42は、これまでの山行でも上位クラス。
ちなみに、同じ山梨百名山“四天王”の鶏冠山も、コース定数43のタフな山行でした。
長い林道歩き、富士川源流から横岳峠までの急登、そして山頂手前の岩場。
数字がそのまま、山梨百名山・四天王の手強さを物語っていました。
鋸岳ってどんな山?
鋸岳(のこぎりだけ)は、赤石山脈(南アルプス)の北端に位置する、標高2,685m(第一高点)の山です。
山梨県と長野県の県境にあり、日本二百名山、そして山梨百名山に選定されています。

名峰・甲斐駒ヶ岳のすぐ北西に隣り合い、その名のとおり、ノコギリの歯のような鋸歯状の険しい山容が大きな特徴です。山全体が岩稜で構成されており、これは南アルプスのなかでも特異な存在とされています。
富士川(釜無川)水系と、天竜川水系・戸台川、その源流をなす山でもあります。
最高点は第一高点(2,685m)。
その先、第二高点とのあいだが鋸岳の核心部で、「鹿窓(しかまど)」をはじめとする鎖場の難所が連なります。

鋸岳は、山梨百名山のなかでも“四天王”と呼ばれる難峰のひとつに数えられています。
どの山も長い行動時間、大きな標高差、岩場、ルートの不明瞭さなど、それぞれに厳しさを抱えた山々です。
※山梨百名山全体の一覧は、山梨百名山100座まとめに整理しています。
鋸岳には、整備された一般登山道はありません。
不安定な岩稜歩きが続くため、日本二百名山・山梨百名山でありながら、山中で出会う登山者はけっして多くない山です。
- 🔴 長野県側の戸台から角兵衛沢を詰める道(通称・クラシックルート)
- 🔵 富士川源流(釜無川)から横岳峠を経由する道(富士川源流ルート)
- 🟢 甲斐駒ヶ岳からつなぐ縦走(上級者向けバリエーションルート)
今回私が歩いたのは、登山口に取り付くまでに長い林道が待つ、富士川源流(釜無川)ルート(🔴赤で表示)
横岳峠を経て、鋸岳(第一高点)を日帰りで狙う行程です。
なお、第一高点の先に続く鹿窓・小ギャップといった鎖場の難所は、今回は目指していません。
あくまで横岳峠から第一高点までを、慎重に往復するプランです。
手強い。でも、登れないわけじゃない。
ルートとペースさえ間違えなければ、しっかり狙える山。
ただし岩稜の難峰だけに、十分な準備と慎重な判断が必要な一座です。
アクセス・駐車場
このルート。最大の関門と言ってもいいのが、登山口に取り付くまでの長い林道歩き。
工事車両用の砂利道(釜無川林道)が、10km続きます。

🚗 車でのアクセス
中央道・小淵沢ICから、国道20号(甲州街道)を諏訪・茅野方面へ。
道の駅 信州蔦木宿を過ぎ、釜無川沿いの林道に入っていきます。
一般車が入れるのは、国土交通省作業道ゲート詰所まで。
ここが、長い林道歩きのスタート地点です。
- 小淵沢ICから釜無川ゲートまで:約30〜40分
- 長野側から来る場合は、中央道・諏訪南ICも利用できます
- 私たちは5時前には現地着。早出で正解でした(もっと早い人もたくさんいました😅)
国土交通省作業道ゲート詰所(専用駐車場なし・トイレなし)
- ゲートの手前、道幅が広い路肩に駐車します
- 大型トラックなど工事車両が通る道なので、邪魔にならない位置に
- トイレはないので、道の駅 信州蔦木宿で済ませておくのがおすすめ
- 砂利の工事道路なので、風が強い日は土埃がすごいそうです
🚌 公共交通でのアクセス
JR中央本線「富士見駅」または「小淵沢駅」が最寄り。 ただし登山口までの直通バスはなく、タクシーかレンタカー利用が現実的です。 早朝スタートが前提になるため、公共交通だけで日帰りするのはかなり難しいと思います。
🚲️自転車は必要?
行きは基本的に登り坂なので、乗って進むのはかなりしんどいです。
ただし、帰りの林道下りでは圧倒的に楽。
使うなら「登りは無理せず押す・途中でデポする」くらいの気持ちがちょうどよさそうです。
登山日記 |① 釜無川ゲートから、自転車で林道へ
5時前の国土交通省作業道ゲート詰所。6月なのですでに日は昇っており辺りは明るいです。
思ってる以上に車が多くて驚きました。

ここからの長い林道に備えて用意したのが、自転車です。
「林道が長いから、あったほうがいいよ」と。
いざ、出発……ところが、です。
この林道、基本的に登り坂。
自転車に乗っていくのも、しんどい。 かといって、押して歩くのも、しんどい。
どっちにしても、しんどい 😩
二人とも、口に出していました。
「これ、歩いていったほうが良かったんじゃない?」
「帰り、ほんとに楽になるのかね……?」
疲れはもう、序盤からピーク。
たまらず、ゲートから3.5km地点で自転車をデポしました。
そこから歩きはじめたら—— まあ、楽なこと!
なんで最初からこうしなかったんだ、と。
このときは、まだ自転車を恨んでいました(笑)

自転車を使うなら、坂で無理せず「ある程度まで押し or 担ぎ」と割り切るのが正解かも。
(※この自転車、最後にちゃんと報われます)
② 巻き道とログハウス、そして3人組
自転車で一度抜いた3人組に、歩きはじめたらすぐ抜き返されました(笑)
道中、崩落地点が2箇所。
その巻き道を、3人組がルートファインディングしてくれて、後ろをついて歩かせてもらいました。
そして、ぽつんと佇むログハウスに到着。

ここで3人組と一緒に休憩。
話してみると、うち1人は鋸岳の登山経験あり、とのこと。 なんとも、心強い。

③ 油断が招いた、ルートロスト
経験者のいる3人組は、歩くのが速かったです。
お願いしたわけでもなく、自然と私たちは後ろをついていく形になっていました。

……数分後。
ふと見ると、先頭の人が、立ち止まってます。スマホを見て場所を確認しているよう。
それを見て自分もYAMAPのGPS地図を見たら——
ルート、外れてる(笑)
YAMAPを見ながらルートに戻るように。
ショートカットしながら、なんとか正規のルートに復帰できました。
もちろん、相手は何も悪くありません。
速い人の後ろを、気持ちよくついて行ってしまった——ただ、それだけのこと。
これは、いい教訓でした。
人について行くときほど、自分でも地図を確認しないとダメ。
信じたのは、自分。 だから、返ってくるのも、自分。
経験者がいるからと安心しきっていた、自分への戒めです。
④ 富士川源流から、横岳峠へ
ルートに戻り、富士川の源流に辿り着きます。


源流を過ぎ、急登をこなすと横岳峠なのですが、

ここまで先行していた3人組とは、いつの間にか離れていました。
横岳峠に着くと、もう誰もいません。

実は3人組、ここから鋸岳とは逆方向の横岳方面へ向かっていたんです。
「じゃあ俺らは、帰りに余裕があったら横岳に寄ろうか」 ——そんな話をしながら、私たちは鋸岳へ。
(※結論から言うと、帰りにそんな余裕はありませんでした。笑)

⑤ 終わらない急登と、ギザギザとの初対面
横岳峠からは、しばらく緩やかな登り。 ……と思ったのも束の間。

そこからは、ずっと急登。
やっぱり四天王。容赦がありません😨
それでも、1時間近く登ったところで、ごほうびが。
右手に、仙丈ヶ岳。

北岳、間ノ岳。 これには元気が出ました。

でも、急登はまだ続く。
次のポイント、三角点分岐まではコースタイム1時間40分。(YAMAPで見たら、予定より少しだけ早く着きました)


長い。 休憩を取る間隔が、だんだん短くなってきます。
そして—— ついに、アイツが姿を現しました。

鋸岳のギザギザ。
見えてよかった。天気もよくてよかった。
……けど、正直、険しすぎて見たくなかった(笑)
「えっ、あれを行くの!?」 ヤバすぎる山容。
登山者を寄せ付けない威風堂々とした佇まいです。
⑥ 森林限界、ヘルメット、イワカガミの岩場
登るにつれ、森林限界へ。
ハイマツが増え、木は低く、まばらに。

稜線の岩っぽい区間に入る手前で、ヘルメットを装着。

三点支持をしっかりすれば、登れます。
でも岩場である以上、落石のリスクはあります。
先行者・後続者がいるときは、なおさら慎重に。
ここはやっぱり、ヘルメットが安心です。
そして、足元には花。

イワカガミは、横岳峠を過ぎたあたりではポツポツでしたが、 岩場っぽくなると、急にたくさん咲いていました。
苦しい登りに、小さな彩り。沁みます。
ここから先は、鋸岳らしい岩場と、山頂で待っていた思わぬ一体感。
そして帰り道には、行きで恨んだ自転車が“最高のごほうび”に変わります。


コメント