甲斐駒ヶ岳・アサヨ峰 テント泊登山記|北沢峠ベースで巡る山梨百名山98・99座目

登山日記

深夜0時50分、ヘッドランプで歩き出す

2日目は0時50分に出発しました。

こんな時間にスタートするのは初めてです。

夜のテント場。ライトに照らされたテントが並ぶ
出発は0時50分 まだ真っ暗なテント場

真っ暗な中を、ヘッドランプの明かりだけで歩きます。

写真もほとんど撮れません。

ただ黙々と歩くしかない時間でした。

樹林帯なので、クモの巣が顔にかかります。

前日が雨だったので、木も石も濡れています。

濡れた石は、けっこう滑りました。

夜の鎖場。濡れた岩に鎖とロープ
濡れた岩に鎖とロープ ヘッドランプの光だけで通過します

仙水小屋までが30分ほど。

夜の仙水小屋。ソーラーパネルと「仙水小屋」の看板
仙水小屋 夜中でも明かりがついていました

そこから仙水峠までが、さらに30分ほどです。

この区間でガスが濃くなりました。

岩がごろごろした斜面に入ると、どこを進めばいいのか分からなくなります。

暗い上にガスなので、ルートファインディングがかなり難しい。

ここで助けられたのが、YAMAPのフィールドメモでした。

ケルンがたくさんあるので、それを目印にしてください、と書いてあったんです。

実際、そのとおりでした。

ヘッドランプに照らされたケルン。岩の堆積とガス
これがそのケルン ガスの中でこれを探しながら進みます

あの一文がなかったら、かなり時間を食っていたと思います。

先に歩いた人が残してくれた情報に、こういう形で助けられるとは思いませんでした。

夜の仙水峠の標識
仙水峠に到着 ここから駒津峰への登りが始まります

仙水峠からは駒津峰へ向けての急登が続きます。

ここがなかなかの登りでした。

そして、ここもクモの巣が多い。

「クモの巣は一番乗りの証」と、誰かに聞いたことがあります。

たしかにそうなんでしょうけど、正直苦手です(笑)

駒津峰に着いたのは3時前。

標高2,752mです。

駒津峰の山頂標識。「南アルプス 駒津峰 標高2750m 長谷村」
駒津峰 真っ暗で展望はありません

ここで空を見上げました。

少し雲がありますが、星がバッチリ。

これは日の出も期待できるかもしれない。

そう思って、少し足が軽くなりました。

オリオン座が写った星空と、雲海の下の街明かり
ナイトモードで撮影 この空を見て日の出に期待しました

六方石から摩利支天分岐へ|甲斐駒の白い砂

駒津峰を越えて、六方石に着いたのが3時20分ごろ。

六方石付近の巨岩。空が少し明るくなり始めている
たくさんの巨岩の向こうが少し明るくなってます

ここが直登ルートと巻き道の分岐です。

私は巻き道を選びました。

暗い中で直登を行く気にはなれませんでした。

六方石の分岐標識。直登ルートとトラバースルートの分かれ道
六方石分岐 迷わずトラバースルートへ🥾

このあたりから、甲斐駒特有の白い砂が出てきます。

花崗岩が風化した、白くて細かい砂礫です。

これが、けっこう歩きづらい。

足を置くとずるっといきます。

歩いていて、鳳凰三山を思い出しました。

鳳凰小屋から地蔵岳へ登るときの、あの石と砂の感じにそっくり。

岩の質が同じなんだと思います。

3時50分ごろ、摩利支天への分岐に着きました。

摩利支天は帰りに寄ることにして、そのまま山頂を目指します。

六方石付近の花崗岩の岩場とワイヤー
明るくなってから撮った同じ区間。夜はここを暗いまま通過しました。

甲斐駒ヶ岳|52分の暗闇と、貸切の日の出

砂礫の急登を登りきり、山頂に着いたのは4時10分ごろでした。

コースタイムより、だいぶ早く着いてしまいました。

夜の甲斐駒ヶ岳山頂の祠。中に草履がぎっしり奉納されている
山頂の祠

日の出は5時ぐらい。

約50分間、ここで待つことになります。

真っ暗な山頂に、私しかいません。

「誰か来ないかな」そんな気持ちで山頂を散策しました。

ここで面白いものを見つけます。

1つの標柱の表と裏で、山の名前が違うんです。

片面が「甲斐駒ヶ岳」。もう片面が「東駒ヶ岳」。

柱には、北杜市と伊那市による説明書きもそれぞれ付いていました。

山梨側の説明板には、開山した人の名前がありました。

諏訪出身の小尾権三郎。

文化13年(1816年)に、いまの北杜市白州町から開山したと書かれています。

権三郎はその3年後、24歳の若さで亡くなっています。

伊那側の説明板を読むと、

東駒ヶ岳は、長野県の伊那側での呼び名。古くから伊那谷の人たちは、西にある中央アルプスの駒ヶ岳を「西駒ヶ岳」、東にある南アルプスの駒ヶ岳を「東駒ヶ岳」と呼びならわしてきました。

柱に付けられた「東駒ヶ岳」の説明板
伊那市が令和6年度に設置したもの。

伊那側からの道が拓かれたのは、権三郎が亡くなって5年後のことです。

弟子や縁者が遺志を継いで、黒河内村の山奉行に協力を求めたと書かれていました。

先月、木曽駒ヶ岳に桂小場から登りました。

あのルートの入口の看板には「西駒登山ルート」と書いてありました。

途中の将棊頭山には、西駒山荘という小屋もあります。

あの「西駒」が、この説明板の「西駒ヶ岳」でした。

約1ヶ月のあいだに西と東の駒ヶ岳を登ることができました🙌

▶関連記事:木曽駒ヶ岳クラシックルートを歩く|桂小場から1泊2日テント泊登山記


お盆の甲斐駒ヶ岳山頂、寒かったです。

このとき着ていたのは、長袖シャツ、ウィンドシェル、その上にレインウェア。

3枚重ねていますが、まだ寒かったです。

寒がりな人なら、ダウンかフリースが要ると思います。

夜明け前の甲斐駒ヶ岳山頂。冷え込む時間帯
夜明け前は気温が下がる時間帯。ぐっと冷え込んでくるのを感じました。

そして、5時。

日が昇りました。

地平線のあたりに雲があって、完全な、まんまる太陽を拝むことはできませんでした。

でも、360度のパノラマと雲海が見られて最高です☺️

金峰山と国師ヶ岳の上から昇る朝日
金峰山(左)と国師ヶ岳(右)の上から朝日が昇ります
朝日を浴びた山頂の祠
祠の中には草履がぎっしり奉納されてます。

明るくなると、山頂からの展望がもっとすごいことになりました。

富士山が見えます。

その手前に鳳凰三山。

右手には北岳と間ノ岳、南アルプスの稜線。

手前はこれから登るアサヨ峰と栗沢山の早川尾根です。

山頂からのパノラマ。富士山・鳳凰三山・北岳
左奥が富士山、手前が鳳凰三山、右が北岳方面。

さらに右にカメラを向けると、仙丈ヶ岳がそびえています。

雲海の向こうにそびえる仙丈ヶ岳
南アルプスの女王・仙丈ヶ岳 

足元は一面の雲海。

太陽がようやく顔を出すと、光を浴び雲が輝き出しました。

朝日に照らされる雲海。左は八ヶ岳
朝日に照らされる雲海 左は八ヶ岳

結局、誰も山頂には来ず、貸切状態のまま日の出を見ることができました。

日本百名山・甲斐駒ヶ岳の山頂独占、プラス日の出と雲海。

何と贅沢なことでしょう。これだからテント泊登山はやめられません😭

山頂近くの駒ヶ岳神社に参拝する
山頂近くの駒ヶ岳神社本社に参拝します🙏

9合目まで下りて、烏帽子岩にある駒ヶ岳神社の本社へ参拝します。

山頂の祠に奉納された草履、ここに並ぶ石碑と剣。

甲斐駒ヶ岳は、いまも信仰を集めている山です。

無事に下りられるよう、お願いしておきました。

烏帽子岩の駒ヶ岳神社本社。「大國主命」「駒嶽大神」の石碑と剣が並ぶ
「大國主命」「駒嶽大神」の石碑と剣が並んでいます

摩利支天|錆びた剣と雲海

5時40分ごろに山頂を出て、摩利支天へ向かいました。

甲斐駒の本峰から少し下ったところにある、岩の峰です。

摩利支天へつながる白い砂の道
摩利支天へつながる白砂の道

ここには石碑と祠があって、錆びた鉄の剣が何本も奉納されています。

山頂とはまた違う、静かな場所でした。

摩利支天の石碑と、奥の岩の上の祠
錆びた剣が何本も刺さっています。

この時間が、この日いちばん展望が良かったです。

雲もなく、下は完全な雲海。

暑くなってきたので、ここでレインウェアを脱ぎました。

北岳と間ノ岳の稜線
摩利支天から見るアサヨ峰と栗沢山。奥の尖っているのが北岳。

栗沢山|昨日引き返した場所

六方石を通り、駒津峰へ。

ここで小休憩を取りました。

起きたときに作っておいたアルファ米「梅じゃこごはん」を半分、行動食を摂りました。

明るくなった駒津峰。夜に通ったときとは違う眺め
来た時と比べて明るいのが嬉しいです☺️
駒津峰から見た甲斐駒ヶ岳と摩利支天
ここからの甲斐駒ヶ岳は素晴らしい 右のこんもりしたのは摩利支天

休憩しているとだんだん北沢峠から登ってくる人も増えてきました。

仙水峠へはひたすら下り。

しかもガスが上がってきて、仙水峠に着くとガスの中でした。

仙水峠の道標 周りはガスに覆われている
仙水峠 ガス多めです

今から行く栗沢山は、甲斐駒を見る絶好の展望台です。

そこからしっかり甲斐駒を拝むのが、目標のひとつ。

「ガスに巻かれる前に着きたい」

仙水峠から栗沢山 木々の向こうは白いガスで覆われている
ここは完全にガスの中。。

早く登るか、ガスに巻かれるか。

オレが早いか、ガスが早いか。

栗沢山への競争が始まりました(笑)

ペースを上げて、息を切りながら歩を進めます。

いつも以上に水を飲みながら、どんどん登ります。

ガスが晴れ始めた栗沢山への登り
追い抜いた?ガスが晴れそうです

途中振り返ると、驚きの景色がありました。

振り返って見えた、雲の上にそびえる甲斐駒ヶ岳
振り返ったら甲斐駒 ラスボス感がすごい😯

甲斐駒が近い!

しかも雲の上にそびえてる!

雄大なその姿に驚きながらも、最後の力を振り絞り大岩を登っていきます。

そして着きました。栗沢山!

栗沢山の山頂標識「栗沢山 2714M」と、その奥の甲斐駒ヶ岳
栗沢山 2,714m 奥に甲斐駒ヶ岳

9時ちょうど。

甲斐駒が雲を従えているうちに、絶好の展望台へ辿り着けました。

昨日、私はここで引き返しています。

スマホが切れて、アサヨ峰を諦めた場所です。

今日は、同じ場所に立って甲斐駒が見えている。

今日来れて良かった、と拳を握りしめました。

雲がかかった北岳
北岳は雲がかかってしまいました😢

アサヨ峰|99座目

栗沢山からアサヨ峰までは、道標によると0.9km、コースタイム1時間です。

3つの目標のうち、2つ達成できました。

残るはアサヨ峰登頂です。

栗沢山で息を整え、今日最後の目標に向かって歩みを進めます。

アサヨ峰へ続く岩とハイマツの稜線。正面がアサヨ峰
正面の山がアサヨ峰です

岩とハイマツの稜線を進みます。

稜線らしくアップダウンがそれなりにあります。

アサヨ峰の山頂近くの岩稜
山頂近くまで来ました

でも今まで登ってきた甲斐駒や栗沢山に比べたら、疲れは感じません。

9時40分ごろ、ガスが来る前にアサヨ峰に到着です!

岩の上に立つ「アサヨ峰」の山頂標識
岩の上にある「アサヨ峰」山頂標識

山梨百名山99座目・アサヨ峰登頂です!

山頂には、標識が3つありました。

十字型の古い木の標柱と、道標と、「アサヨ峰 山梨百名山」の標柱。

山梨百名山の標柱を見つけたときは、やっぱり嬉しかったです。

ここから見る甲斐駒も、なかなかGOOD。

雲がもくもくと湧いて、山頂を包んだり、離れたり。

アサヨ峰から見た甲斐駒ヶ岳。右下に摩利支天
アサヨ峰から見る甲斐駒ヶ岳 摩利支天は山頂右下

たまにちょこちょこ顔を出してくれる。

こういうのを見ると、夏山だなという感じがします。

雲がかかった北岳・間ノ岳の稜線
北岳・間ノ岳の南アルプスには雲がかかったまま

すれ違う人とも「今日は晴れてよかったですね」と口々に話していました。

みんな昨日はうんざりだったんだと思います。

せっかく来たのに雨、という感じで。

でも今日は天気に恵まれました。

下山・長衛小屋テント場へ|水が足りない!

ここで、ひとつ失敗しています。

水が足りませんでした。

持っていったのは1.5Lほど。

これで足りると思っていたんですが、アサヨ峰から帰る途中の栗沢山のあたりでなくなりました。

10時間の行動で、しかも太陽が照りつけていました。

思っていたよりガブガブ飲んでしまったんだと思います。

口の渇きは、塩分タブレットをなめて凌ぎました。

なめると唾液がたくさん出て、口の中が潤った感じがするんです。

それで気を紛らわせていました。

ただ、これは推奨しません。

口の中が一時的に潤った感覚がしただけで、水分補給の代わりにはなりません。

今回は明らかに、水の見積もり不足でした。

ちゃんと多めに持つのが正解です。

樹林帯のベニテングタケ
下りの樹林帯で。きのこを見ると秋の訪れを感じます。

テント場に戻ったのが11時半すぎ。

晴れた日のテント場。ずらりと並ぶテント
撤収の日。昨日とは別の場所みたいです。

テントを撤収する前に、バスの状況を確認しに北沢峠へ行きました。

係の人に聞いたら、12時前の段階で、待っている人が23人。28人になれば臨時便が出るとのこと。

定刻では13時10分の予定でしたが、すでにバス待ちの人が多いようです。

テント撤収してから戻ってくることを告げると、

「13時10分(定刻)ぎりぎりに来ても乗れますよ」と言われました。

並んだのに乗れない、ということがないように運行しているそうです。

行きのバスも同じで、いくら並んでいても乗れるようにバスが待機しています。

ここは安心していい部分だと思いました。

北沢峠のバス待ちの列
ベンチにザックを並べて待ちます。

結局私が乗ったバスも、13時ちょうどに出発しました。

戸台パークに着いたのが13時50分。

この日は行きも帰りも、定刻より早い出発でした。

まとめ|山梨百名山・残りはあと1座

当初、私の計画では、甲斐駒ヶ岳は山梨百名山の100座目にしたい山でした。

最後に取っておきたかったんです。

でも甲斐駒は人気の山なので、山頂は混雑します。

ゆっくり100座目の実感を噛みしめるのは難しいだろうな、と思いました。

結果として、甲斐駒が98座目、アサヨ峰が99座目。

残り1座は、笹山(黒河内岳)です。

アサヨ峰から見た甲斐駒ヶ岳。ガスが稜線を這い上がっている
99座目のアサヨ峰から、98座目の甲斐駒ヶ岳を振り返る

今回の2日間を振り返ると、1日目にアサヨ峰へ行かなくて本当によかったと思っています。

あの日は午後からずっと雨で、ガス。展望もありませんでした。

バッテリーが切れて、記録が残らないなら行く意味がないと思ってキャンセル。

その判断のおかげで、晴れた2日目に2座とも回せました。

トラブルがあっても、いい方に転ぶとガッツポーズしたくなります。

10時間歩いて、めちゃくちゃ疲れました。

それでも、最高の2日目でした。

真っ赤に焼けた地平線と一面の雲海、山頂のシルエット
52分待った甲斐がありました

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